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読書と地図

 昭和50年頃から、本を読むとき地図(と年表)を手元に置くようになりました。

 

 始めの内は普通の地図帳でしたが、だんだん大型の地図帳になり、一国一葉の国別地図、年代ごとに作成されている歴史地図、アメリカ・イギリス・ヨーロッパの道路地図、日本の場合は江戸時代の切絵図なども集まってきました。

自慢は地中海上空8000kmからヨーロッパ大陸を俯瞰する鳥観図で、縦横1150×105cmで1990年にドイツで購入しました。足元にモロッコ~シナイ半島、目を上げると水平線上にグリーンランド~北極海、その下にアイスランド~イギリス~スカンジナビア半島、西はイベリア半島から東は黒海が見えます。


 ジェームス・ボンドならこの地図に加えてスイスの道路地図でカーチェイスの現場。ホーンブロアー・シリーズ(全11巻、田中さんに進められて読み始めた)や同じく海洋冒険小説のボライソー・シリーズ(28巻)では、航海の経路や初視認する海岸線、海戦のキーとなる島の確認や河と運河をボートで伝うヨーロッパ大陸縦断経路の確認をしていました。本国から遠くアメリカ・中南米沿岸までの遠征では地球儀での経度の確認も重要、休戦条約の発効日時が本国からの距離によって違うので、海戦の位置と日・時刻によっては敵船捕獲の成果が無効になることも有るからです。

 

 ハンニバルのローマ遠征や十字軍、コンスタンチノープル陥落も舞台は一望です。

史記や三国志、水滸伝では歴史地図で当時の地名と現在の地名を照合し、大判の地図で地形と距離を確かめます。赤壁への曹操と劉備の行動の経緯を確認したり、梁山泊への英雄の集結までの旅路を追ったりします。徒歩で移動する軍隊の戦場への誘導とその兵站管理を考えると「孫氏の兵法」の経営学応用本の浅薄さを感じます。


 鳥観図と地球儀を少し離れて双眼鏡で覗いたり、近づいて虫眼鏡で見るのも不思議な臨場感があって楽しいものです。最近はGoogle MAPやStreetViewも便利に使っていますが。StreetViewで主人公が活躍する公園や博物館が映画のように見える楽しみもありますが、全体の時空のスケール感やワクワク・ドキドキは望遠鏡や虫眼鏡で覗く地図・地球儀が勝ります。

 


番外

Google MAPやStreetViewは日常 便利に利用できますが、ニュースの現場を確認するのがお奨めです。

東日本震災の際は津波が襲った海岸線の状況が即座にアップされました。いまでは刻々と増えている汚染水タンクで満杯になった原子力発電所の敷地が確認できます。

海外の場合は、どこでもStreet-Viewというわけにはいきませんが、航空写真に十分な分解能があり、例えば北朝鮮の山で行き止まる核実験場への道路やミサイルを発射した海岸線やその近くの軍艦や貨物船、竹島の韓国軍の建屋や停泊している船舶、尖閣諸島もハッキリ見えます。繰り返し発射される北朝鮮のミサイルを「アメリカと北朝鮮の駆け引き」の面から他人事のように伝えるメディア報道を補正し、日本の安全という基本問題に立ち返って考えてみるに役立ちます。

 

                                  大橋 楷一郎


 
 
 

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